秋との出会い

「秋がなくなった」

とテレビのキャスターが言いました。

ギュッと冷える空気に触れると、そんな気持ちにもなります。

夏の茹だるような暑さから「ほっ」と一息をつく秋ですが、ないと言われると無性に秋を感じたくなります。

まだ早いかな！？

とも思うのですが、少し厚手の上着を羽織り玄関を出ます。

久しぶりの散歩。

ビュ〜

と風が吹きます。

「冬になったのか」と歩みを止め、180度向きを変えます。

秋を探す旅は、ほんの数分で終わりました。

私も冬の景色をつくりだすかのように、下を向き、身をかがめるような姿で帰ります。

今日は家で鍋でもしようかなぁと食欲に意識を向けていきます。

門を通り、庭を通り。

玄関にドアノブに手を当てると、なんとも言えない心地のいい香りが私を包みます。

覚えのある香り。

思い出そうと180度向きを変えます。

オレンジ色の花を咲かせた“金木犀”が私に秋を伝えてくれていました。

ちゃんと秋はいました。

私の庭に秋は来ていました。

意識しているようで、していなかった私。

“忙しい”を理由に携帯ばかりに気を取られ、気付けていなかった景色。

もっとゆとりを。

もっと前を。

今しか味わえない自然をしっかり味わいます。

金木犀が教えてくれた、大切なこと。

2023/10/26